メモ

忘れっぽいです

2015年見た映画、海外

印象に残った作品をメモ。海外作品と、ついでに各種動画配信サービス雑感。


インヒアレント・ヴァイス

ポール・トーマス・アンダーソン監督作にいつも居た、フィリップ・シーモア・ホフマンの不在。それを埋めるかのように本作に登場するジョシュ・ブローリンは、『殺しの分け前』のリー・マーヴィンのような風貌をしています。
殺しの分け前』という映画の中のリー・マーヴィンは、間違いなく主人公で、映画の中で自分を騙した人間を次々と殺していくのですが、見終わった後よくよく考えると死んでいく人間たちは足を滑らせたり、周囲の人間に撃たれたりで勝手に死んでいくばかり。彼が直接手をかけた人間は、実は一人も居なかった事に気づかされます。

殺しの分け前』のリー・マーヴィンは、実は観客と一部の登場人物にしか見えていない亡霊だったのでは、と思えるような不思議な存在です。
そして、『インヒアレント・ヴァイス』のジョシュ・ブローリン。彼は間違いなく映画内に実在する人間です。しかし、映画の最後に唐突に現れる、あの奇妙な言動を見せるジョシュ・ブローリンだけは、『殺しの分け前』のリー・マーヴィンと同じく、観客と主人公にだけ見えている亡霊のように思えます。それは、映画内では主人公にとっての、映画外では監督にとっての、もはや埋めようの無い欠けたピースを実存化させた、優しい亡霊なのではないか。自分に足りない物を補い、律してくれる、大切な人の亡霊。
というのは、多分に僕の願望が入った、過剰にセンチメンタルな解釈ですが、ついそんな事を思わせるくらい、「去り行く時間と人々」への諦観と温かな眼差しを湛えた映画です。まるで、ポール・トーマス・アンダーソンが亡き父に捧げた『ブギーナイツ』のよう。


ワイルド・スピード SKY MISSION

せめて映画の中では、叶わぬ夢を見たいのよ。


オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分

車の中で電話する一人の男だけを映し続ける、才人スティーヴン・ナイト監督脚本の野心作。
何もかも捨て去り、結果など忘れたフリをして、生まれ直す。セリフを拾い出すと、主人公に託さんとするテーマを全て言葉で説明している事に気づくのですが(それこそ紀里谷和明『GOEMON』、辻仁成『フィラメント』ばりに)、演技/演出/脚本の妙によって自然な会話劇として成立。単なるワン・アイデア/ワン・シチュエーションの一発ネタに終わらない技巧派の秀作です。


エクストラ テレストリアル
グレイヴ・エンカウンターズ』のヴィシャス・ブラザーズ(コリン・ミニハン + スチュアート・オーティズ)映画。事が起きるまでは退屈だけど、一度UFOが出て来れば、後はエイリアンの大盤振る舞い、という『グレイヴ・エンカウンターズ』同様の構成。
やってみせる事は王道で既視感バリバリ、更に演出/映像面のチープさも目につくので貶す人が多いのも理解できますが、僕としては宇宙船内部もしっかり見せてくれるサービス精神や、ラストの『Xファイル』ネタ、そしてマイケル・アイアンサイドの出演が嬉しく、好ましい作品です。エンド・クレジットの選曲も心憎い。


ジェサベル
車椅子の女性が酷い目にあう「呪われた家モノ」かと思いきや、実は田舎のドロドロ因習モノ、というフックがなかなか楽しいホラー。地元民や土地から湧き出る不穏感が弱いけど、ブラムハウス製作映画としては充分な良作。日本か香港あたりの手練れホラー監督が演出していたら「傑作」に成り得たんじゃないかなー。


スター・ウォーズ フォースの覚醒
レイとフィンが出会った直後、TIEファイターの奇襲から逃げるシーンで「手を取ったり取られたり」を繰り返す、あの感じ。あの全く面白くないやりとりを「活劇的」と勘違いして嬉々としてやっちゃう感じが実にルーカスっぽくて、そういうダメな所まで完コピする姿勢に感心しました。ああいうシーンが生み出す「遅さ」があってこそ『スター・ウォーズ』になる、と作り手は理解してるし、実践も出来る。現在の米エンターテイメント業界のレベルの高さを思い知ります。
今回、新旧キャラのバトンタッチと『新たなる希望』の焼き直しに徹する事で、過去シリーズから引き摺っている枷の多くを外す事に成功し、身軽になりました。今回はルーカス印の『スター・ウォーズ』でしたが、次回はこのスタッフ陣のオリジナリティと真価が見える新たなる『スター・ウォーズ』が見られるのでは。


キングスマン
マシュー・ヴォーン監督の露悪表現は、汚いモノを汚いままでなく、キラキラに磨いて映し出す「気取り」が目に付いて、どうにも苦手でした。ちょっとダミアン・ハーストっぽいなーなんて思っていたのです。が、今回のクライマックスの花火は、僕のちょっとした好みなど軽々と超越するレベルで、あまりにも美しく露悪表現がキラキラ輝いていたので、マシュー・ヴォーン監督のやり方に素直に感心しました。


薄氷の殺人
「今の中国を写し取りたい」という監督の作意が鼻につく、などと偉そうな事を思いつつ見ていたのですが、クライマックスの花火で全て吹き飛ばされました。


ファッションキング

ファッションをネタにした王道『ベスト・キッド』系物語。やたらと凄いコンテストがある感じとか、大げさに盛りまくるファッション・バトルの描写とか、ミスター味っ子っぽくて楽しいです。学校の全校集会や体育祭がいちいちファッション・バトルの場になる無邪気で笑える前半に比べ、後半は割とハードな負け犬たちの挽歌になっていきますが、前半で培ったキャラ立ちのおかげで陰湿になりません。キャラとアイデアで丁寧に味付けされた王道、良作。


劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス
さらさらと美しく流れていくのに、混乱に満ちている、ムルナウ『サンライズ』の都会パートみたいな映画。


ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム

全編台詞ナシで展開される、ショーンたちによる牧場主救出劇。ファミリー映画をある程度劇場で見ていると(もしくは自分が子供の頃を思い出すと)、いかに子供の集中力が持続しないか身にしみて感じるのですが、本作は凄いです。子供がずっと楽しそうに見ている。しっかりリアクションも取る。その反応を見れば、この映画が傑作である事は間違いありませんし、僕も子供時代に見たかったな、と思います。
「私たちはしばしば、トーキー映画特有の台詞による心理的説明や合理的な起承転結を、うるさいものに感じることがある。まどろっこしくも感じ、事物や風景がもっと偶発的に、原因も理由もなく出現することを欲したりする」と巌谷國士氏が名著「映画 幻想の季節」に書いています(僕がジャンクな映画を好むのもこの理由が大きいのですが、それは置いといて)。
ある時期までのピクサーは「台詞による心理的説明や合理的な起承転結」さえも物凄く楽しく見せる、ウェルメイドな映画の権化でしたが、それでも「台詞による」説教臭さやメッセージ性の煩さが僅かながらありました。もちろん、ピクサーはそのちょっとうるさい説教やメッセージ性で、教訓を与えてくれる所があるからこそ幅広く親しまれているのですが、もし僕が捻くれたクソガキの頃ピクサー映画を見ていたら、その、ほんの少しの説教臭さを、「おはなしをしてあげよう」という教育的態度を敏感に感じ取って、親には「面白かったー」などと言いつつ、心のどこかがモヤモヤする気持ち悪さも持って帰っていただろうと思います。
しかし本作であれば、捻くれクソガキの僕もきっとシンプルに楽しんだ事でしょう。「台詞による」ことなく、初期ピクサー同様にウェルメイドな「心理的説明や合理的な起承転結」を映像で、しかも表情豊かなクレイアニメで見せてくれます。その態度は「おはなしをしてあげよう」ではなく、「いっしょにあそぼう」です。


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各種動画配信サービス雑感。洋画はどこも似た様なラインナップなので特に言う事ナシ。映画しか見ないのでテレビ番組やアニメの配信状況はよく知りません。

Hulu
一日の長もあって物量が充実。公開後一年程度のメジャー系中堅映画は結構入ってくるし、松竹系が割と強いので小津安二郎の有名作や山田洋次の古い作品、ウルトラマン映画がちょくちょくあって嬉しい。使い勝手やユーザーインターフェイスはイマイチ。吹替も少ない。他の動画配信サイトによほど見たいコンテンツがある時以外は、基本Huluに入ってます。

Netflix
後発だけあって数は少ないですが、リトルウィッチアカデミアを劇場公開と同時に配信したり、レンタル屋で新作扱いの映画が平然と並んでいたり、日本未ソフト化のマイリトルポニー劇場版が日本語吹替で配信されていたりと、油断できないラインナップ。変なドキュメンタリーが多いのも良いです。70年代NYのギャング文化からヒップホップ誕生に至るドキュメンタリー『ラブル・キングス』とか凄く面白かった。
日本語吹替作の多さ、料金体系の柔軟さも魅力。ユーザーインターフェイスも、アプリの使い勝手も一番良い。4K動画がTVにしか対応していないのが惜しい。5KのiMacで4K映画見られるなら永続会員確定なんだけど。

U-NEXT
月額料金は税抜1990円と高めだけど、その分毎月もらえる1000ポイントを消費してペイパービューの新作や有料作品を視聴可能。マッドマックスやビリギャルを他のサイトより遥かに早く見ることが出来ます。
ポイント不要の見放題作品も値段相応に多いです。全サービスで一番多いかも。東映系に強く、オールスターズNS3までの全プリキュア映画配信や、文太兄貴主演ヤクザ映画の数量はなかなかに圧巻です。日活映画も多く、最近さらに日活ロマンポルノもラインナップに加わりました。神代辰巳監督作があるのはU-NEXTだけでしょう。

dTV
月額税抜500円なのに時折すごい大盤振る舞いをするサービス。今はスターウォーズと男はつらいよシリーズ全作配信と恐ろしい事をしています。
かつてはSD画質オンリーでしたが、今の新規追加作品はどれもHD。シンプルに映画を見るだけなら一番良いサービスかも。僕はブラウザとの相性が悪いのであまり使いませんが。

Amazonプライムビデオ
こちらも月額換算すると安いのに、クレしんとドラ映画全作配信と恐ろしい事をしています。角川系に強いので、現在角川傘下の大映映画も豊富。Amazonプライムの付随サービスでこの個性的ラインナップは大したものだと思います。

GYAO!
広告は気持ち悪いけど、突如有名作やクラシックな名作を配信するので油断ならない存在。今も邦画ホラーに、Jホラーの礎とも言える『DOOR』シリーズと、日本を代表するスプラッタ(のポンコツな続編)『死霊の罠2』が並んでいます。やはり油断ならない、見なきゃ。パチモノ映画などのジャンクな作品群から自分好みの秀作を見つけ出すのも楽しいです。
[ 2015/12/29 13:25 ] 映画 | TB(0) | CM(0)
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Author:かりふら