・『
闇金ウシジマくん Part2』
http://ymkn-ushijima-movie.com/movie/監督、脚本:山口雅俊
出演:山田孝之、綾野剛、菅田将暉、中尾明慶、窪田正孝、やべきょうすけ
暴力の果てにある「死」を、ぼんやりと、もしくは、無いモノとして扱うのが、『
クローズZERO』『
ドロップ』といったヤンキー映画の楽しい所です。
金属バットでアタマをフルスイングしても、人は死なない。そのお気楽な暴力観へのカウンターとして、暴力の果てに死がある事をキチンと描いた『
ヒーローショー』を井筒監督が作りました。僕は2000年以降の邦画では五指に数えるレベルで『
ヒーローショー』が好きですが、レンタルビデオやGyaoで見る『
ドロップ』みたいなお気楽暴力映画も、それはそれでユルく楽しめるので大好きです。
映画版『
闇金ウシジマくん』は前作も今作も、そんなヤンキー映画の暴力観と役者陣を、学校の外に持ち出した様な作りとなっています。結構ハードにイタイ事やコワい事をしますが、不思議とドロドロし過ぎず後腐れ無い。ポップコーンを食べながら安心して楽しめる範囲に収まっています。
物足りない、と言われる部分でもありますが、その軽さが、仕事帰りの疲れたカラダでダラけて見る分には丁度良かったです。
映画の世界設定や演出スタイルは良かったですが、群像劇としては、二つの話が別々に展開される、お世辞にも誉められた構成ではありませんでした。
しかし今回、主要人物に実力ある旬の役者をズラリ揃えたおかげで、ブン回し脚本で行き当たりばったりに登場人物が出入りするのが、むしろ「次は誰がどんな目に合うんだろう」と期待させる楽しみを生んでいるように感じます。
主要人物は誰も彼も見事にハマっているのですが、中でも高橋メアリージュンは最高でした。

壮絶なバックグラウンドを感じさせる女闇金社長。今回の主要キャストの中では演技経験圧倒的に少ないだろうに、全く見劣りしないどころか、常に一緒にいるマキタスポーツが影薄くなるくらいキャラ立ってて、素晴らしかったです。見るつもり無かった『
キカイダー REBOOT』を彼女目当てで見るくらい、グッと来ました。
・『
チョコレートドーナツ』
http://bitters.co.jp/choco/監督、脚本:トラヴィス・ファイン
脚本:ジョージ・アーサー・ブルーム
出演:アラン・カミング、ギャレト・ディラハント、アイザック・レイヴァ
1979年、同性愛者差別の激しい世間の中で、ゲイのカップルが、育児放棄されたダウン症の少年を引き取り育てようとする物語。
監督のトラヴィス・ファインは、俳優として『
チャイルドプレイ3』『
シン・レッド・ライン』『
17歳のカルテ』『
トムキャッツ 恋のハメハメ猛レース』に出演と、良い意味で節操の無いフィルモ。
ベースとなった脚本を書いたジョージ・アーサー・ブルームは、スクービー・ドゥーやヒッチコック・アワーなどテレビ脚本を大量にこなしてきた方。
この映画、演出や構成が非常に素直なのですが、その素直さに、海千山千の映画人だからこそ出来る力強さがあって、とても良かったです。大山のぶ代時代のドラえもんやアンパンマンみたいなベタさ。ベタなだけに、ラストの意外性も光ります。
・『
キカイダー REBOOT』
http://www.kikaider.jp監督:下山天(『
マッスルヒート』『
SHINOBI』)
脚本:下山健人(『
特命戦隊ゴーバスターズVS海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE』)
出演:入江甚儀、佐津川愛美、高橋メアリージュン
うっすい物語に、やたらスローを多用してムリヤリ重厚感を演出。散々スローで勿体ぶったやりとりの後に、ようやく始まった戦闘シーンもまたスローの連続。
映画後半にはすっかり、スローが使われるだけでイライラする身体に変化していました。見事なルドヴィコ療法映画。久しぶりに拷問の様な退屈映画に出会えて嬉しいです。
ヒロインとその弟、そしてキカイダーの三人が流浪の逃亡をするロードムービーパートだけは、ロボットと旅を共にするジュヴナイル的なワクワク感があって、良かったです。
ストーリー自体が相当に幼稚なので、無理に大人ぶって演出せず、ジュヴナイル寄りに演出していたら素直に面白くなったんじゃないかなー。
高橋メアリージュンは表情の作り方が見事でした。最高です。